前書き
話の流れとしては真のショートストーリーの直後の話と言う位置づけです。
<別離と羽ばたき>
プロ「えーーーーっ!?」
美希「えーーーーっ!?」
律子「えーーーーっ!?」
ミーティングルームに3人の叫び声が同時にこだました。
千早「っ!?びっくりした…何もそんなに驚かなくても。律子まで…」
3人の声に驚いた千早はほっと胸を撫で下ろした。
律子「そりゃ驚くでしょう…Sランクまで辿り着いたってとこでそんな…」
事の始まりはついぞ1時間前
765ファン感謝祭が終わった数日後の事
千早は感謝祭の成功に確かな実感をしつつも心の底に眠る違和感に悩まされていた。
笑顔で集まったファンに手を振りつつも千早の胸中は晴々とはしていなかった。
打ち上げの最中も皆が感謝祭成功の達成感にはしゃぐ中、千早は一人ぽつんと見えない違和感を自分に問いただしていた。
「…やさん」
千早「…」
「ちはやさん!」
千早「っえ?」
声のする方を見るとそこには屈託のない笑顔を携えたやよいが紙コップを持って立っていた。
やよい「千早さん、どうしたんですか?考え事ですか?」
千早「どうして?」
やよい「なんか難しい顔してましたから…はい、これ千早さんのジュースです!」
千早「あぁ、ありがとう。高槻さん」
やよい「折角の打ち上げなんですから、みんなでパァーッとやりましょう!」
千早「えぇ、そうね」
やよいの言葉に今は成功を喜ぼうと決めはしたが結局千早の気持ちは終始晴れる事は無かった。
そして数日後のある日
いつもの様に休暇をトレーニングも兼ねて軽くジョギングをして休憩を取っていると数人の男子学生が向かって来ていた。
学生A「765ファン感謝祭見た?美希ちゃんやばいくらい可愛くね?」
学生達は話に夢中なせいか、又は気を回していないのか千早がそこに居る事に全く気付いていない様子だった。
学生B「間違いない!でもさ、ティアラって千早の歌がやばいべ?」
学生の何気ない言葉に千早はピクリと反応した。
学生C「確かにねぇ、まだ高校生なのにあれだけの歌唱力持ってるんだからすごいよねぇ」
聞き耳を立てるつもりは無かったが自分の話題となるとどうしても耳が傾いてしまった。
学生B「ぶっちゃけさ、千早ならソロでもいけるんじゃね?」
千早「…」
学生C「今、歌で勝負出来るアイドルって少ないしね。歌手としてもいけるんじゃないかな」
それを聞いた千早は何故かもやもやとした違和感から開放された様な気がした。
千早「…そうか、歌で…一人で…何処まで行けるか試してみたいのか…」
自分に言い聞かせるように千早はぼそっと呟いた。
自分はアイドルとして、また一人の歌手として前進して行きたい。
そう思うと千早の心はいつの間にか晴々としていて初めてプロダクションの門を叩いた時の様に期待と不安でいっぱいになっていた。
くるりと踵を返すと来た道を戻るように走っていく。
通り過ぎていった学生達を抜き去ってまっすぐ自宅へと進む。
そして自宅に着くとプロデューサーに電話をしてミーティングルームの空き時間を確認した。
千早がシャワーを浴びて着替え、事務所に着くとプロデューサーがいつもの様にコーヒーを片手に煙草をくゆらせて出迎えてくれた。
プロ「疲れは取れたか?」
そう言いながらプロデューサーは煙草を備え付けの灰皿でもみ消した。
千早「えぇ」
千早はプロデューサーの何気無い優しさに感謝しつつもこれから言わんとする事に対して少し申し訳なく思っていた。
プロ「じゃあ行こうか」
ミーティングルームのドアを開けると美希と律子がなにやらもめていた。
律子「美希、ここにあったお菓子全部食べちゃったの!?」
美希「食べたよ、おいしそうだったから♪」
美希はにべもなかった。
律子「食べたよって…亜美真美を黙らせる為に買ってきておいたのに〜ぃ。どうしてくれるのよ〜!」
怒り心頭の律子をよそに美希は小さくあくびをしてデスクに突っ伏した。
美希「あふぅ、律子は細かいの。無くなったものは買い足せばいいの」
プロ「あの、お取り込み中悪いんだけど…」
美希「ハニーッ♪」
声を聞いた途端、美希が勢い良くプロデューサー抱きつく。
律子「ったく…」
やれやれといった感じで律子が席に着く。
プロ「律子はなんでそこに座ってるのかな…?」
プロデューサーの言葉に律子は腕を組んでアゴをあげプロデューサー下目遣いで見下ろした。
律子「ティアラの招集、私が呼ばれない方がおかしいとおもうんですけど、臨時プロデューサーのわ・た・し・が!」
美希の一件で律子に頭が上がらないプロデューサーは渋々律子の言うとおりにした。
プロ「オホン、じゃあ千早が今回集めた訳なんだけどなんの話しだろう?」
プロデューサーは慣れた手付きで美希を座らせその隣に腰掛けた。
プロデューサーと向かい合うようにして千早が座る。
千早「はい、話しと言うのは…ここまできてちょっと言いにくいんですけど」
とは言いつつも千早は決心した面持ちで淡々と話し始めた。
千早「私、ティアラを脱退してソロで勝負したいんです」